日本の伝統行事に欠かせない際物の、由来や成り立ちについてご説明いたします。
その背景にある"物語"を知っていただくことで、より深く商品を理解していただけるでしょう。
お雛様は、誕生した女の子の分身として飾られます。これには、、平安時代の昔より行われてきた「祓(はら)い」の側面があり、女の子の災厄を代わりに受けるという、一種のお守りとしての役割があるのです。
また、十二単をまとい結婚式に臨んでいる姿をしていることの意味は、予祝(あらかじめ祝うことで、幸せを呼び込む)という意味があります。お内裏様は、お雛様の結婚相手(赤ちゃんにとっては、将来の旦那様)であり、天皇様の結婚式を模していることから、「いい人にめぐり合い幸せに暮らせますように」という、強い思いを形にして表しています。
三人官女は、宮廷に仕える女性を表した人形です。
古来、各国の王朝では宮廷において女性に官職を与え、君主や后妃(こうひ)の身の回りの世話をさせたのが始まりとされています。男子禁制とされる後宮や后妃の私生活の管理には女性の官僚が使用されました。
中央の座った姿の官女を待ち上臈 (まちじょうろう)(門口まで迎えに出る婚礼儀式の司会進行役)といい、上殿(お殿様に直接拝謁(はいえつ)できること)を許された身分の高い成人女性で、化粧は眉なし・お歯黒が正式です。また、両脇の二人は立ち姿でお手伝いの巫女さんで、結婚前の未成年ということで、歯も白く眉も付いています。
仕丁は、三世代を表す人形です。
中央の青白い泣き顔の形は若年を表し、左の赤く怒った顔の人形が壮年(そうねん)(成人として最も体力、気力が充実している年齢)を表し、右のニッコリ笑った顔の老人の人形が老年を表しています。一番若い人が中央にいるのは、一番大切な未来を意味しているからといわれています。若いうちは何も判らず泣きべそをかいたり怒ったりするが、壮年期の頑張りで老年にはニコニコと笑っていられるようにと、一生に対する願いが込められています。
また、この三人はおめでたい結婚式ということで、仕事を休んで御神酒を飲んで酔っているらしく「笑い上戸(じょうご)」「泣き上戸」「怒り上戸」と、三人三様の酔い方をしているので「三人上戸」とも呼ばれます。
この年に生まれた女の子の幸せを願い、一針一針縫いあげた縫いぐるみの飾り物です。初節句に雛壇の両脇に飾り「無病息災」「良縁」を祈願して吊るす縁起のよい飾り物です。
・吊るし雛の種類
〔桃〕 | 邪気を祓い不老長寿を与える果実。 |
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〔柿〕 | 根が堅いことから堅固の象徴。「嘉来」ともいう。 |
〔鶴〕 |
長寿を願う。 |
〔蝉(せみ)〕 |
蝉は「羽化登仙(うかとうせん)」といって、羽が生えて天に昇り仙人になるという教えから。不死の象徴。 |
〔鼠〕 |
大黒様の使いで金運働き者子孫繁栄の象徴。 |
〔たこ〕 |
末広がりでおめでたい様子。 |
〔鳩〕 |
幸せと平和の象徴。 |
〔猿〕 |
災いが「去る(猿)」ように。 |
〔兎〕 |
兎の赤い目は病気を治すといわれている。 |
〔米俵〕 |
五穀豊穣を願って。 |
〔宝袋〕 |
恵がありますように。心が豊かでありますように。 |
〔金魚〕 |
幸運・金運を呼ぶ魚。 |
〔なす〕 |
物事を「成す(なす)」成し遂げる。 |
〔苺〕 |
お母さんの母乳のような実を付けることから、母の象徴。 |
〔蝶〕 |
さなぎから蝶へ。綺麗になっていく姿を願って。 |
〔ひよこ〕 |
可愛い雛(赤ちゃん)のこと。 |
〔蛤(はまぐり)〕 |
堅い一対。相性のよい人とめぐり合えますように。 |
〔唐辛子〕 |
魔除け・虫除けに使われる。 |
〔みかん〕 |
その昔、不老不死の果実として伝えられた橘がみかんとなった。 |
〔三番叟(さんばそう)〕 |
五穀豊穣の願い。また、お祝いの時に踊る舞のこと。 |
〔松竹梅〕 |
「歳寒の三友」寒さに耐え人生に益し、おめでたいことの象徴。 |
〔這い人形〕 |
「這えば立て、立てば歩けよ」の親心。 |
〔おくるみ人形〕 | 産まれたばかりの可愛い赤ちゃん。 |
江戸時代に、江戸中村座で演じた「心中万年草」の女形で大変な人気を博した「佐野川市松」という上方の歌舞伎役者がいました。
市松人形という名前の由来には諸説あります。その1つが佐野川市松に似せて作られた人形という説。また、佐野川が着ていた「市松模様」と呼ばれる衣装を着せた人形という説もあります。
この市松人形、子供が健やかに育つように祈りを込めて枕元に置くなど、厄除けの身代わりとして重宝されてきました。こうした習慣は、室町時代から始まったそうです。また、市松人形は着せ替え人形でもあります。その昔は、おばあちゃんやお母さんが手作りの衣装を仕立て、子供の遊び相手として愛されていました。
こうした麗しい(うるわしい)日本の伝統は、多くのやさしい心で代々受け継がれております。
中国の正史、二十四史の1つである後漢書の『黄河の急流にある竜門と呼ばれる滝を多くの魚が登ろうと試みたが、鯉のみが登り切り竜になることができた』という故事が「鯉のぼり」の由来です。この話にちなんで、鯉の滝昇りは男の子が様々な困難に打ち勝ち大成する立身出世の象徴となりました。
鯉のぼりは、男児の誕生を天に告げその守護を願うための目印であり、「我子も健康に育ち、将来は大きく出世して欲しい」と願うご家族の強い気持ちを込められた贈り物です。
皐月(さつき)の晴れた日、風になびく鯉のぼりは、そこに元気な子供がいる証です。
羽子板は、女の赤ちゃんの無病息災を願うお守りです。羽根突きで使用する黒くて硬い羽の玉は「無患子(むくろじ)」という大木の種です。「子供が患わ無い」と表記することから、お正月に子供の無病息災を願い、この硬い種を追羽根にして羽子板で羽根突きをする風習が生まれました。また、諸々の邪気を跳ね(羽根)除けて健やかに育つようにという願いが込められています。